たまにAmazonPrimeで見かける実話もの。「風をつかまえた少年」。
アフリカのマラウイを舞台に、飢饉を襲った絶命寸前の村を少年が救うという物語です。
2009年にウィリアム・カムクワンバさん本人著で本が出版されていますが、世界でベストセラーになりました。そして本作は2019年に映画化されたものです。
今回は、この映画を観た感想と考察をお伝えしたいと思います。なお、本記事にはネタバレを含みますのでご注意ください。
風をつかまえ水を得た
アフリカのマラウイってどんな国?
マラウイ共和国はアフリカ大陸南東部に位置する小さな国です。日本マラウイ協会によると、世界に派遣された青年海外協力隊員の数が最も多い国なのだそう。
Google先生にマラウイについて調べると情報は色々と入手できますが、見かけるキーワードとして「貧困」があります。
作中でも触れられていますが、明らかに豊かとは言えない環境であり、お金がなければ教育も受けられません。その教育自体も、学費を払える家庭が少ないことから教師の給料も少なく、学校が閉鎖になりました。
やがて、村には飢饉が訪れ、食料の配給には多数の人が訪れとても全ての人に配ることはできません。また、食料は取り合いになり強盗も起こるようになります。
物語の舞台は、そんなマラウイから始まります。
知恵という大きな武器
主人公のウィリアムは、学費が無く学校には通えませんでしたが、図書館に忍び込んで勉強していました。そこで、風力発電に関する本を見つけ、「自分でもつくれるのでは」と思い、それで村を救えると信じます。
父親が持つ自転車を使い、手作りの風力発電を作ることに成功します。ポンプで井戸から水を吸い上げ、灌漑ができるようになりました。なんとウィリアムが14歳の時です。
本で学んだ内容を知識で終わらせるのではなく、生活の知恵として駆使したことが彼の大変大きな武器でした。
飢饉から暴動を起こす可能性ももちろんありましたが、彼はそのような行動をせず、諦めずに道を切り開いたのは感服です。

出典:映画.com (C)2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
本人もすごいが演者もすごい
本作は実話をもとにして制作されています。主人公のウィリアム・カムクワンバさんはもちろん実在します。
彼はその後、南アフリカ共和国でエリート養成大学であるアフリカリーダーシップアカデミーに奨学金を受けて通い、その後アメリカのダートマス大学で環境学を学びました。現在は農業や教育、若者支援のプロジェクトに携わっているようです。2013年にはタイム誌「世界を変える30人」にも選出されました。
そして、このウィリアム役を演じたマックスウェル・シンバさんもとても志の高い若者でした。映画の公式HPにキャスト陣の紹介がされていますが、目標はアメリカのハーバード大学やマサチューセッツ工科大学で電気工学を学びたいのだそう。
アフリカで十分な教育を受けられるようになれば、将来もっと優秀な若者達が世界で活躍するかもしれません。
【学ぶ】ということ
貧困=かわいそう?

出典:映画.com (C)2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
マラウイという国について、作中を通じて色々と考えさせられます。「貧困を救い、子供達が教育を受けられるように寄付をしないといけない!」と思う方もいるでしょう。
実際に、十分に教育を受けられない国に学校を建てて子供たちが教育を受けられるようにしようと寄付を募い、テレビ番組や慈善団体が活動していました。
その一方で、学校を建てたはいいものの、そもそも教える教師がいないことや学費を払えない家庭が多いこと、学校を管理する人がいないことが問題になっているという事実がありました。
貧困国では、お金や建物だけでは解決できない根深い問題があるのです。(政治、周辺国の関係性、歴史、戦争など)
学ぶことは平等である
私は、この映画が一番訴えたいことは、貧困国の現状ではなく学ぶことの大切さだと思います。
日本をはじめとして先進国では当たり前に教育を受けられます。多くの学校や市区町村には図書館があります。義務教育は中学校までですが、高校行くのはほぼ当たり前、大学進学率も年々上昇しています。
ただ私たちは、そんな環境に甘んじてはいないでしょうか。
その環境で十分に学べているか、
むしろ学ぶ姿勢をもっているか、
学べる環境を無駄にしていないか、
本作はそんなことを改めて考えさせられる映画なのだと思います。
問いかけられているのは貧困国ではなく、先進国なのでしょう。だからこそ、本が世界でベストセラーになったのだと思いました。
映画の感想
実話ものの中でも面白い映画だと思います。
マラウイが飢饉に陥るまでの描写が作中の8割近くを占めており、悲惨な状況であることはわかりました。
風力発電を使った灌漑に成功し、その後の村の繁栄に関する描写がもう少しあれば、ウィリアムさんがどれほど村に貢献できたのかがよりわかったのではと思います。
まあ、最後のエンドクレジットで、ウィリアム・カムクワンバさん本人の写真や映像が出たことで、本作の信憑性はぐっと高まりました。本当に実話であることを確かめられるのは重要ですね。

ウィリアム・カムクワンバさんご本人 出典:映画公式サイト Photo by Jamie-James Medina
まとめ
日本では学校に行くことが当たり前になっています。大学進学率も上昇しており、大卒でないと就職が厳しいと言われる時代です。
しかし、当たり前になったからこそ、学べる環境に有難みを感じなくなりつつあるのも事実。この映画は、そんな教育の素晴らしさを伝えてくれる映画です。
以上、TakaVeiwでした。