池井戸潤さんによる小説「七つの会議」。それを野村萬斎さん主演で映画化したものがあります。
企業の不正を題材にしたこの映画は、大企業やその子会社ならではの風習を皮肉たっぷりに表現しており、同じような立場のサラリーマンならば思うところが少なからずあるはず。
今回は、そんな映画「七つの会議」を観た感想と考察をお伝えします。なお、本記事には映画のネタバレを含みますのでご注意ください。
企業の不正にどう向き合うか
親会社>>>>子会社
この映画のストーリーを端的に表現すると、「企業の不正を正義感の強い従業員が明るみにして、悪い権力者どもを叩き潰す」という感じです。
舞台となった中堅メーカー・東京建電では、新幹線や飛行機の椅子等を製造していましたが、コスト削減のために部品の一つであるネジを十分な強度をもたないまま使用し、製造していました。
つまり強度偽装されたネジを使っていたのです。
上層部では既にその情報を握っていましたが、あえて隠していました。つまり「リコール隠し」に動いていたのです。
作中では、不良品のネジを用いた製品を順次取り換えており、「ヤミ改修」も行われていました。
なぜリコール隠しに動いていたかというと、東京建電にはゼノックスという親会社があり、リコールが発覚した際の賠償金やら費用やらでグループ全体に多大な損害を及ぼすと考えられたためです。
問題意識を持つ社員

出典:映画.com (C)2019映画「七つの会議」製作委員会
万年係長で陰ながら冷ややかな目を向けられていた、主人公の八角もその実行者の一人でした。
しかし、八角は社内の実態やリコールの影響を把握し終えた後に、リコールを公表するという約束を上層部とつけていました。しかし、東京建電の社長は隠蔽するよう指示をします。
「人命に関わる重大な事案だ!」と憤る八角は、ゼノックスグループ社長が出席する会議で、これまでのあらすじを全て伝えます。
その時、親会社と子会社の圧倒的な権力の差が生み出した悪しき慣習や、売上至上主義による弊害が次々と明るみになりました。東京建電の社長すらも、ネジの強度偽装を指示していた張本人だったのです。
悪いことはいずれバレる
ゼノックスの社長は、その事実を聞いてもなお握りつぶそうとしました。しかし、八角は情報を各メディアにリークします。
これにより、企業の不正が公にされ、悪者が晒されました。
やっぱり、いくら上下関係の厳しい企業といえど、自らが働いている会社で不正が行われていると知れば正義感が働く社員がいるでしょう。
悪いことを承知で事を進めていても、いずれバレます。映画だからこのような結末になったのではなく、現実でも起こリます。
キャストがもはや半沢
一世を風靡した半沢直樹の名言「倍返しだ!」。ドラマ「半沢直樹」はかなりヒットしましたね。
その半沢直樹を観たことがある人なら必ず思うでしょう。
「あれ、半沢直樹で見たことある人多くない?」
香川照之さんいるし。北大路欣也さんいるし、片岡愛之助さんもいる。それもそのはず、監督が同じ人(福澤克雄監督)だから。
特に営業部長・北川を演じる香川照之さんの演技はもはや別格。
「カイジ」といい「半沢直樹」といい、香川さんのこのような役割の演技は迫真で嫌味たらしくて最高。この人実は昔は大手企業の役員でもやっていたのか?と思います。
そんな豪華なキャスト陣が揃って面白くないはずがない!
資本主義の闇か
巨大企業はさらに巨大に
近年はM&Aが主流になり、企業の売買は盛んに行われています。
M&Aを行う理由は、自社には無い技術を持つ企業を買ってより強い組織にすることも考えられますが、一方で、ベンチャー企業によるイノベーションのジレンマを起こさせないということもあります。
つまり、芽が出る前に自分のものにしておくのです。このような芸当は、資本力のある企業でないとできません。
水が水を呼ぶように、巨大な企業はさらに巨大になります。
企業を買うこともあれば、自社部門を切り離して別会社として独立させることもあります。どちらのケースも、100%子会社となったからには、親会社の言うことに原則従います。
資本主義の競争社会
資本主義とはつまり競争社会ですから、他社と競合して売上を上げなければなりません。親会社から「売上を上げろ」と言われれば、面向かって反対するような人は極少数でしょう。
売上を上げないと、昇格や昇給もありません。場合によっては、地方に左遷されるかもしれません。
部長の北川と、係長の八角は、同期でありながらも待遇に差が出てしまったのは、そのような酷な競争社会にどう向き合ったかの差であると思います。最終的には協力して告発するんですが。
これまで現実に発生した企業の不正は、この映画で表現されているように根深く腐った企業文化があると同時に、資本主義による弊害も訴えているように思います。
この映画の感想
率直に、企業の不正を扱った映画として面白かったです。
まあ映画というだけあって、無理矢理な部分や表現が過剰なところはあります。
ちょっと笑ってしまったのは御前会議。あの会議のセッティングはどうなっとるんや。本当の会議の場であんなに距離を離してボソボソと話されても絶対聞こえないでしょう。それほど重要で崇高たる会議だということを演出したかったのはわかります。
そしてもって営業一課の課長になった原島は、不正を追い求めるのはいいけれど本来の仕事はどうしているのでしょう?物語の後半からは仕事そっちのけです。
とはいうものの、全体としてはGoodな映画でした!
まとめ
私自身、邦画はあまり観ないタチなのですが、こういう企業やサラリーマンを題材にした映画は好きです。何故なら自分と重ね合わせる部分があるから。
ドラマの半沢直樹があそこまでヒットしたのも、世の中の多くのサラリーマンが自分と重ね合わせて、まるで実体験のように感じられたことが大きいと思います。
この映画も、そんな感覚にさせてくれる良質な映画です。ありがとう福澤監督!
以上、TakaViewでした。